コンサル市場の拡大に伴い、業界内外から「コンサルの質が低下している」と言われ、転職に二の足を踏む方が一定数いらっしゃいます。
実際に、弊社に転職相談をされる方で、程度の差はあれ「コンサルの質の低下」を気にされている方は非常に多いです。
本記事では実際にコンサルファームでの経験やその後のポストコンサル転職経験、また現在コンサル特化の転職支援をしている経験を踏まえて、「コンサルの質の低下」の実態について解説したいと思います。
質が下がっていると言われる背景
ここでは、まず「コンサルの質が下がっている」と言われる背景について解説したいと思います。
国内のコンサルティング市場は急成長市場の一つであり、ITコンサル領域を中心に市場規模は年々拡大しています。
実際、IDC Japanが発表している「国内のコンサルティングサービス市場」を見ると、2020年には8,623億円だった市場が、2025年には1兆2,551億円に拡大することが見込まれています。
もう少し遡ると、2015年時点では6,463億円の市場規模(出所:2015年の国内コンサルティングサービス市場は前年比6.3%増の6463億円に―IDC)であり、2015年から2025年の10年間で市場規模が2倍になる形となっています。
当然、コンサルティングビジネスは人月商売であるため、市場規模(=各社売上)が拡大するためには、コンサルタントの数もそれに合わせて増えていくことになります。
例えば、国内で最大規模を誇るアクセンチュアの人員数は2014年を境に急増しており、約6,000人だった従業員数は、2021年時点で18,000人規模に到達しています。
ちなみに従業員数が18,000人規模の企業は国内上場企業と比較すると170-180番目程度であり、これまで"少数精鋭"というイメージがあったコンサルティングファームも気付けば国内大手企業と並ぶ規模になっていることに驚きます。
具体的な社名で見てみると、アクセンチュアは国内だけで絞っても住友林業や三井不動産よりも巨大な組織となっています。
ここまで急拡大すると当然ながら採用基準を下げざるを得ず、またこれまでのような育成を行うことも難しいことから、「コンサルの質が低下している」と言われるようになっているのではと考えられます。
質の低下はずっと言われ続けている
一方で、「コンサルの質の低下」というのはもう随分前から言われていることでもあります。
実際、筆者がコンサル業界に入った2014年時点(今から約10年前)でも同じように「コンサルの質の低下」が叫ばれていました。
また、歴史を遡ると例えば1960年代後半でも「コンサルの質の低下」が叫ばれていたと紹介されています。(書籍『マッキンゼー 世界の経済・政治・軍事を動かす巨大コンサルティング・ファームの秘密』より)
つまり、それらの言葉を信じるとコンサルは誕生以来ずっと質が低下し続けていることになります。
しかしコンサルが誕生以来ずっと質が低下し続けているというのは、このコンサル市場の拡大を踏まえると現実的に考えにくいです。
ではなぜ質の低下がこれほどまでに叫ばれているかというと、筆者としては質の"変化"を"低下"と表現してしまっていることが要因だと考えています。
質の"低下"ではなく"変化"
そもそもコンサルティングの歴史を遡ると、今とは全く異なるものであったことが分かります。
現在主流となっているファクトベース・コンサルティング(データ等の定量化された指標に基づいて科学的なアドバイスを行うコンサルティング)の誕生以前は、自身の経営経験に基づく経営アドバイスを行うことがコンサルティング(グレイヘア・コンサルティング)とされていました。
しかし、経営コンサルティング産業の父と言われ、マッキンゼーの中興の祖でもあるマービン・バウワーが、MBAを卒業した若手を起用したファクトベース・コンサルティングを作ったことで、コンサルティングスタイルは大きく変化しました。
当初は所謂「戦略」がコンサルティングテーマであったところから、「業務・IT」に関するコンサルティングニーズも拡大していき、それに合わせて最適なコンサルタント像も変化していきました。
さらに直近では、クライアントを取り巻く環境変化のスピードが急速に早まっていること、またアドバイスが実行されることにこそ価値があることを踏まえて、多くのファームがアドバイスに留まらず実行支援にまで踏み込む形となっています。
かなり簡略化した説明ではありますが、このようにコンサルティングの質は時間と共に大きく変化しています。
グレイヘア・コンサルティングをしていた人たちからすれば、経営経験のない若者がファクトベースでコンサルティングをすることが質の低下と写っているかもしれません。
これまで切れ味のあるアドバイスのみで対価をもらっていたコンサルタントからすれば、実行支援という形で対価をもらうことが質の低下と写っているかもしれません。
しかし、これらはクライアントのニーズに合わせてコンサルファームおよびコンサルサービスが変化したというだけであり、コンサルタントの質が"低下"したのではなく、"変化"であると思います。
さいごに
本記事では、実際にコンサルファームでの経験やその後のポストコンサル転職経験、また現在コンサル特化の転職支援をしている経験を踏まえて、「コンサルの質の低下」の実態についてご紹介しました。
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