本シリーズはコンサル転職に際して出題される「ケース面接」の例題及び解答集である。
実際にケース面接を突破したことのある現役コンサルタントがケース問題を解き、回答や考え方をお見せする。
本記事では、「回答そのもの」に加え、その回答を導く為の「考え方」にも比重をおいて解説する。
Contents
問題
お題:人身事故を減らすには?
考える時間:10分
難易度:★★★
種類タグ:非ビジネス系、図解
回答
(ⅰ)前提整理
まず初めに今回のお題の前提を以下のように整理します↓
- 依頼主:地下鉄を運営する鉄道会社
- 対象の人身事故:ホーム上で起きる事故
特に、今回は踏切やその他場所で起き得る人身事故は対象とせずホーム上で起きる事故のみを対象として考えます。その理由としては、そもそも数が少ない(と一般常識から判断できる)為となります。
(ⅱ)現状分析・課題整理
次に人身事故を減らす上での課題を整理します。
つまり、人身事故が起きている要因を仮説ベースで整理していきます。
人身事故の要因は以下のように整理しました。
- 故意:自らの意思での人身事故
- 事故:自らの意思ではなく事故による人身事故
- 混雑が原因:事故による人身事故のうち混雑が原因の人身事故
- 飲酒が原因:事故による人身事故のうち飲酒が原因の人身事故
故意的or事故的、事故も原因別にさらに細分化し、大きく3つの要因に人身事故を分類しました。
混雑が原因の人身事故は例えば、ホームが混雑しすぎていてホームに押し出されてしまうような人身事故を指し、飲酒が原因の人身事故は例えば、飲酒により足元がふらつくことによる人身事故を指します。
どの要因の人身事故も同程度に起きている、と仮定し、今回は全ての課題をスコープとして施策を考えていきます。
(ⅲ)施策出し
人身事故を減らすための施策を考えていく上で、施策を2つアプローチで考えます。
<施策種類アプローチ>
施策の種類「直接的な方法」と「間接的な方法」に分けて考えるようにしました。
直接的な方法は「物理的な手段を使って人身事故を無くす方法」と定義し、以下のような方法が思いつきます。
- 直接的な方法:ロープ・ホームドアの設置
- 間接的な方法:ポスター等による啓蒙
間接的な方法の啓蒙内容については、家族へ影響し得る賠償金額の啓蒙や心理カウンセラーへの相談の啓蒙を行うような施策を想定しています。
<事故タイミングアプローチ>
上記の間接・直接アプローチが「ホームへ人が落ちる前」の施策がメインですが、人身事故を減らす為には「ホームへ人が落ちた後」の施策もあり得る為、人身事故が起きるタイミング別に施策を考える、というアプローチも採用します。
「(ホームへ)落ちる前」と「落ちた後」に分けて、施策を考えていく、というアプローチです。
以下のような施策となります。
- 落ちる前:上記で出た施策
- 落ちた後:急停車ボタンを増やす、ボタンの反応速度やブレーキ精度の向上、急停車ボタンの使い方啓蒙動画をディスプレイで流す
要因別にそれぞれの施策を1つのフレーム/図に落とし込むと、以下のようになります。↓
※落ちた後の施策は要因によって変わらない為、細分化していません。
上記のフレームに入る施策を考えていくと以下のような施策が出ます↓
- ポスターによる啓蒙:家族へ影響し得る賠償金額の啓蒙や心理カウンセラーへの相談の啓蒙を行ない間接的に人身事故を無くす
- ロープ・ホームドアの設置:物理的な障壁を置くことで、故意・事故両方の人身事故を無くす
- ホーム面積の増築:(特に混雑が起きる)ホーム面積を増築することで混雑による人身事故を無くす
- 電車本数の増加:(特に混雑が起きる時間帯の)電車本数を増加させることで混雑による人身事故を無くす
- アルコールチェック導入:飲酒が多い時期・期間にはアルコールチェックを行い、飲酒量が多い人にはスタッフがホームで付き添う
- 急停車ボタンを増やす:人が落ちた後に事故が防げるよう急停車ボタンを増やす
- ボタンの反応速度やブレーキ精度の向上:人が落ちた後に事故が防げるよう急停車ボタンの反応速度やブレーキ精度の向上を行う
- 急停車ボタンの使い方啓蒙動画をディスプレイで流す:急停車ボタンの使い方がわからない、躊躇してしまう人を減らす為、急停車ボタンの使い方を啓蒙する
フレームの中に整理していくと以下の通り↓
(ⅳ)施策評価
最終的には施策を評価し、どの施策を優先的に行っていくべきか?の結論を考えます。
今回は施策を「実現性/コスト」と「効果」で評価をし、以下の2つの施策を優先的にやっていくべき、という結論を出しました。
行うべき施策
e. アルコールチェック導入:飲酒が多い時期・期間にはアルコールチェックを行い、飲酒量が多い人にはスタッフがホームで付き添う
a. ポスターによる啓蒙:家族へ影響し得る賠償金額の啓蒙や心理カウンセラーへの相談の啓蒙を行ない間接的に人身事故を無くす
"ホームドアの設置やホームの増築といった施策はコストがかかり、そもそも実現性が低い為、検討外とし、急停車ボタンを増やす等の「落ちた後系施策」も、大きな効果が望めないと仮説で判断し、優先度は低いと考えました。一方で「ポスターによる啓蒙」は実現性が高く効果も一定望めそう、「アルコールチェック」は実現性こそやや低いものの、効果は非常に高そうと判断し、優先度が高い施策として抽出しました”
ケース面接での想定質問・ディスカッション
実際のケース面接は以下のような質問やディスカッションが想定されます↓
- 課題として最も大きいと思うものはどこか?
- その課題を深掘りをすると、他にどのような施策が考えられるか?
- 実際に鉄道会社でこれらの施策が導入されていない理由は何だと思うか?(実際に施策を導入していくに当たっての課題は何だと思うか?)
あとがき
今回は課題を特定せずに、幅広いスコープでケース問題を解いたが、オンライン面接が主流で紙や図解を使えない現状のコンサル面接を考えると、よりシンプルなアプローチのほうが適している可能性が高いため、その点は改善する必要がある。
より詳しく知りたい方は、【ケース面接対策】人身事故を減らすには
また、本記事(フェルミ推定・ケース対策)に関するご質問はコメント・Twitter・問い合わせフォームにて受け付けているため、お気軽にご質問いただきたい。
>>他の解答記事を見たい方:ケース例題&解答集
>>動画で見たい方:Youtube、Tiktok