本シリーズはコンサル転職に際して出題される「ケース面接」の例題及び解答集である。
実際にケース面接を突破したことのある現役コンサルタントがケース問題を解き、回答や考え方をお見せする。
本記事では、「回答そのもの」に加え、その回答を導く為の「考え方」にも比重をおいて解説する。
問題
お題:自動車部品サプライヤーの固定削減施策を考えよ
想定の考える時間:10分
難易度:★★
種類タグ:ビジネス系(その他)、コスト削減系
回答
(ⅰ)前提整理
本お題を解く上で、以下のような前提を置くこととする。
- 固定費とは、売上や販売数量に影響されないコストを指す
- 今回対象とする部品サプライヤーは、工場を持ち、単一部品を生産し、メーカーへ納入するサプライヤーを想定
(ⅱ)現状分析
固定費削減施策を考える上で、まずは現状どのような固定費が発生しているのかを整理する。
今回は「プロセス✕固定費項目別」に固定費セグメントを分解・整理する。
プロセス
部品サプライヤーの事業プロセスを以下の6プロセスに分解する。
- 営業・経営管理:顧客とのやりとりや経営管理業務全般
- 企画・設計:部品の企画や設計業務
- 生産:工場で行う部品の生産業務
- 検査:生産後の部品の検査業務
- 保管:検査後の部品の保管業務
- 納入:トラックへの積み込み~移動~荷降ろし等の最終顧客への納入業務。
固定費
固定費は主に4費目に分解する
- 人件費
- 土地代・家賃
- 機械代・減価償却費
- エネルギー費
以下のような「プロセス✕固定費項目別」の固定費セグメントが整理される。
それぞれどのようなコスト項目かについては以下を参照していただきたい。
固定費セグメントを整理した上で、各固定費セグメントの固定費の大きい(=コストインパクト)も合わせて整理する。
コストインパクトの大きさに応じて「小、中、大」というラベルを記載する。(コストインパクトについては仮説ベースで記載をしている)
(ⅲ)課題特定・施策出し
固定費がどのようなプロセスでどの程度かかっているか?を整理できたので、次に課題特定と施策出しを行っていく。
今回は、固定費インパクトが特に大きそうな以下の3つの固定費セグメントを課題として特定し、施策出しを行う。
①保管・納入関連固定費:保管業務や物流業務は部品サプライヤーとしてのコア業務ではないにもかかわらず、人件費(倉庫人員やドライバー)や土地代・家賃(倉庫や駐車場)がかかっており、コストインパクトも大きい。
②検査における人件費:インパクト大
③生産における人件費:インパクト大
※家賃・土地代については、削減施策が「オフィス・工場移転」しか考えれないため、今回は検討対象外とする
※コストインパクトが大きい「生産プロセスにおける機械代(=減価償却費)、エネルギー代」については、①そもそも一度購入してしまったもののコスト削減は難しい点、②機械やその稼働に伴う水道光熱費は製造会社のコアとなるアセットのため固定費削減をしてしまうと売上に対してネガティブな影響が生まれる可能性がある点、から検討対象外としている。
上記の固定費セグメントに対して、削減施策をアイディアベースで考えていく。
保管・物流業務
a. ロジスティクス会社への外注:外部のロジスティクス会社へ外注化することで固定費削減を行う。
検査業務
b. 目視検査におけるテクノロジー活用:現状、目視検査等で多くの人件費がかかってしまいる部分を、AI等のテクノロジーの活用により代替し、人件費を削減する施策である。
生産業務
c. 繁忙期のパート人材活用:部品製造には閑散期・繁忙期がある前提で、もし現状、部品製造の繁忙期に合わせて正社員雇用を行っている場合、パート人材を活用することでより効率的な人材配置を可能とする施策である。
(ⅳ)施策評価
最終的に実現性とコストインパクトで施策を評価すると、以下のような結論を出した。
「結論としては、最もコストインパクトが高く、一定実現性の高いa.ロジスティクス会社への外注を施策として提案する。
次点で、コストインパクトという面でやや劣るb.目視検査におけるテクノロジー活用を提案する。
c.繁忙期のパート人材活用については①現社員のリストラが発生してしまう点、②生産における教育期間は長く正社員でないと対応が出来ない点から実現性が低いと判断」
ケース面接での想定質問・ディスカッション
実際のケース面接は以下のような質問やディスカッションが想定される。
- 土地代・家賃についてはどのような施策が考えられるか?本当に引っ越しだけなのか?
- 他にどのようなアプローチが考えられるか?
あとがき
多くはないものの時折出題されるコスト削減系ケースは、「プロセス✕費目」で整理することが多いため、今回のやり方をぜひ参考にしていただきたい。
重要なのはプロセスに分解する上での「ビジネス理解」が肝となるため、その点は意識していただきたい。
より詳しく知りたい方は、【ケース面接対策】自動車部品サプライヤーの固定費削減施策を考えよ
また、本記事(フェルミ推定・ケース対策)に関するご質問はコメント・Twitter・問い合わせフォームにて受け付けているため、お気軽にご質問いただきたい。
戦略コンサルとしてケース面接に臨む際には、販売戦略やマーケティングの理論についても抑えておくことが不可欠となる。
マーケティングについて理解したい方は、下記記事を参考にしていただきたい。
参考: 販売戦略を考える際に欠かせないターゲットマーケティングとは? | アクシグ