ケース面接例題&解答:医薬品卸会社の新規事業立案

本シリーズはコンサル転職に際して出題される「ケース面接」の例題及び解答集である。
実際にケース面接を突破したことのある現役コンサルタントがケース問題を解き、回答や考え方をお見せする。

本記事では、「回答そのもの」に加え、その回答を導く為の「考え方」にも比重をおいて解説する。

中野周平
解答者

中野周平

欧州系戦略コンサルタントティングファームのローランド・ベルガー入社→フリーコンサルにて大小様々なファームの案件を経験→Webマーケティング系ベンチャーを2社を経験。現在は株式会社Flow Group代表取締役、とあるスタートアップのCMOを兼任。

コンサルマン
監修者

コンサルマン

コンサルキャリア編集部。コンサルキャリアおよびコンサルマンは株式会社Flow Groupが運営しています。Twitterフォロワー1.9万人

問題

お題:医薬品卸会社の新規事業を考えよ
想定の考える時間:10分
難易度:★★★★
種類タグ:ビジネス系(その他)、新規事業系

回答

(ⅰ)前提整理

本お題を解く上で、以下のような前提を置くこととする。

  • 医薬品卸とは、製薬会社から薬を仕入れ、薬局やクリニックへ薬を卸す事業者を指す
  • 新規事業を考える上での制約(例:投資金額やケイパビリティ)は一旦ないものとして自由に考える

(ⅱ)現状分析

医薬品卸事業のビジネスモデルを整理し、関連するプレーヤーを洗い出す。

以下の4つのプレーヤーが医薬品卸の関連プレーヤーとして挙げられる↓

  • 仕入先:製薬会社
  • 直接卸先:薬局 ※院内処方を行うクリニックは一旦考えないものとする
  • 間接卸先:クリニック
  • 最終消費者:患者

ビジネスモデルを図解すると以下の通り↓

医薬品卸のビジネスモデル_ケース面接解法

次に医薬品卸が持つ事業上の強みやアセットを挙げていく。

以下の2つを(他事業を行う企業から見たときに)強みとして挙げる↓

  • 製薬会社とのコネクション・仕入れルート
  • (多数の)薬局とのコネクションや販路

(ⅲ)新規事業案出し

今回は「強み」と「価値提供対象」の2つの掛け合わせのフレームワークを活用し、新規事業案をブレスト・整理していく。

価値提供対象については、既存事業の関連プレーヤーの4プレーヤーを対象とする。
※本来は関連プレーヤー以外のプレーヤーも新規事業の対象となり得ますが、まずは既存事業に近い事業者を対象とすることで、実現性が高く既存事業とシナジーのあるビジネスモデルの抽出を目指す。

このように「ただ闇雲にブレスト」するのではなく「フレームワーク」を活用することで、短い時間の中でも納得感のある新規事業案を考えやすくなる。(特にケース面接の場合は、新規事業のアイディアではなく、以下にそのアイディアを出していく思考プロセスが重要となる為、アプローチ自体を考えていくことが評価につながる)

新規事業の発案アプローチ_ケース面接解法

強み✕対象別に事業案をアイディアベースでブレストしていくと、以下のような事業案が考えられる↓

医薬品卸の新規事業案出し_ケース面接解法

患者向け

a. 自社クリニックの展開:バリューチェーンを広げ、自社でクリニックを展開するクリニック事業

クリニック向け

b. 自社薬局の展開:バリューチェーンを広げ、自社で薬局を展開する薬局事業。流通が簡素化されることで、最終価格を下げられる可能性があり、クリニックとしては安く薬を仕入れられる。

薬局向け

c. 薬以外の商材の販売(toC商材):薬局へ薬以外のtoC商材を販売する事業。例えば、美容系グッズや化粧品、等が考えられる。展開方法としては、2パターン考えられる(他社から仕入れるor自社で作る)

d. 薬以外の商材の販売(toB商材):薬局へtoB商材を販売する事業。例えば、薬局向けのオペレーション効率化ソフトウェアの販売や開業支援コンサルティングサービス、等が考えれる。展開方法としては、2パターン考えられる(他社サービスを担ぐor自社で開発する)

製薬会社向け

e. データ販売:薬局との提携もしくは購入により薬の販売データを入手し、製薬会社へ販売するデータ販売事業。製薬会社は創薬に役立つデータニーズがあるという仮説が前提。

f. 薬局向けSNS:ドクター向けSNSを展開するエムスリーの薬局バージョンの展開。薬局とのコネクションを活かし、薬局向けの情報サイト・SNSを運営。製薬会社は、薬に対するニーズの収集やPR等で活用可能。

(ⅳ)事業案評価

最終的に、どの新規事業を行っていくべきか?、に対して初期評価を出す。

実行する企業の情報がない中で、細かな評価は難しい為、現時点の仮説ベースで粗粗の評価を出す。
評価に際しては、実現性とインパクトの2つの評価軸で初期評価を行っていく。

最終的には以下のように事業案を評価↓

a. 自社クリニックの展開:ドクターの確保等ボトルネックが多数あり、実現性が低い。

b. 自社薬局の展開:現状のビジネスモデル上、他の薬局さんとの関係値を鑑みながらの展開が必要な為、実現性が低い。(既存のお客さんとは異なるエリアでの展開が可能なのであれば検討余地あり)

c. 薬以外の商材の販売(toC商材):他社商材を販売していくのであれば実現性は高いが、薬局における薬以外のモノに対するニーズはあまり高くなさそうな為、大きなインパクトも望みにくい。

d. 薬以外の商材の販売(toB商材):DX化が叫ばれる昨今においてはニーズも高く、他社商材から販売していけるのであれば実現性が高い。その上、toC商材に比べ、単価が高く、インパクトの大きさも期待できる。

e. データ販売:製薬会社のニーズの有無、データの販売可否(個人情報保護法などの規制がどの程度ボトルネックとなるのか?)について問題がなければインパクトは一定見込める可能性あり。

f. 薬局向けSNS:医薬品卸のケイパビリティを鑑みると開発の面で実現性はやや低い。製薬会社から薬局へリーチしたいというニーズについても少ない可能性がある(エムスリーは処方箋を決定する権限を持つドクターを囲っているからこそ製薬会社はお金を払う)

上記を鑑みて、本ケースでは、d.薬以外の商材の販売(toB商材)を行っていくべき、という結論を出す。

医薬品卸の新規事業案の初期評価_ケース面接解法

ケース面接での想定質問・ディスカッション

実際のケース面接は以下のような質問やディスカッションが想定される↓

  • toB商材は具体的にどのような商材が考えられるか?

あとがき

新規事業系はアイディアの質ではなく、アイディアにたどりつくまでの思考プロセスやアイディアを整理するフレームワークが重要となります。ぜひ今回のようなアプローチ(対象✕強み)も参考にしてみて下さい!

以上、参考になりましたら幸いです。

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