伝統的にコンサルティングファームの採用面接の場面で「地頭力」を試すためのお題として用いられてきたフェルミ推定である。
しかし、一部ではフェルミ推定は「くだらない・意味ない・役に立たない」と言われることもある。
本記事では、フェルミ推定が「くだらない・意味ない・役に立たない」というのは本当か、フェルミ推定の効果を最大限に引き出すためにはどうすべきかについて、現役コンサルが徹底的に解説していく。
Contents
フェルミ推定とは
フェルミ推定とは、掴みどころのない数量を何らかの推定ロジックによって短時間で概算することである。
例えば、「日本の電信柱の本数は?」「マクドナルドの売上は?」というお題に対して、推定ロジックと自分が持つ情報を最大限に活用しながら算出する。
フェルミ推定を行うことで、論理的思考力などを具体的に測ることができるため、コンサルティングファームをはじめ、Googleの採用面接でも取り入れられていることでも知られている。
またフェルミ推定は「問題解決の縮図」とも言われており、地頭力を鍛えるためのツールとして非常に有用であると言える。
フェルミ推定がくだらない・意味ないと言われる理由
フェルミ推定がくだらない、意味がないと言われる理由として、採用担当者の視点に立った時に「対策ができてしまう」という点があげられる。
もともとフェルミ推定は「突拍子もないお題を出されたときにどのように思考するか」という点を見極めるための手法であった。
しかし、フェルミ推定の存在自体が広く認知され、これほど対策方法が出回ってしまった今となっては「思考」ではなく「知識」勝負の側面が出てきてしまっているという現状がある。
また、フェルミ推定を面接で活用する場合、問題設計や時間配分が重要になってくる。
問題設計や時間配分をきっちり決めずにふわっとやってしまうと、計算部分に多くの時間が割かれてしまい、"候補者の計算力を計れただけ"ということにもなりかねない。
結局のところ、「誰目線に立つか」「目的をどう設定するのか」でフェルミ推定がくだらないか、意味ないかは大きく変わってくると言える。
フェルミ推定は役に立たないのか?
コンサルキャリアとしては、フェルミ推定は大いに役に立つと考えいる。
前述の通り、フェルミ推定は「問題解決の縮図」とも言われており、地頭力を鍛えるためのツールとして非常に有用である。
しかし、これらの効用を理解せずに、明確な目的なく万能ツールのようにフェルミ推定を活用してしまうと、たちまち役に立たなくなってしまう。
目的を持った問題設計、時間配分を行っていかないと、フェルミ推定はただの"公式暗記問題"や"計算練習"になってしまう。
特に最近はフェルミ推定のために覚えるべきフレームワーク、解き方、数値などが出回っており、書店に行けば多数の対策本が並んでいる。
それらをインプットして"知識"としてフェルミ推定を捉えてしまうと、手段であるはずのフェルミ推定が目的化してしまい、結果として役に立たなくなってしまうということが起きる。
フェルミ推定の効果
上記は「地頭力を鍛える」を元にコンサルキャリア編集部が作成。
フェルミ推定を地頭力を鍛えるためのツールとして捉えると、大きく「仮説思考力」「フレームワーク思考力」「抽象化思考力」の3つを鍛えることができる。
一つ目の「仮説思考力」は一言で言うと"結論から考える"力である。
今ある情報だけで最も可能性の高い結論を想定して、そこから逆算して物事を考えることで、最短距離でゴールにたどり着くことができる。
フェルミ推定では「どの数値を、自分が持つどんな情報を活用して、どのような式で求めるか」を考えることになり、これがまさに仮説思考であり、フェルミ推定で鍛えるられる力になる。
二つ目の「フレームワーク思考力」は一言で言うと"全体から考える"力である。
対象となる事象の全体像を高所から俯瞰することで、検討の抜け漏れをなくすことができる。
例えば「日本のシャンプーの市場規模は?」というお題に対して、「フレームワーク思考力」がない人は「人口×年間消費量×単価」という形で分解してしまうが、シャンプー市場を高所から俯瞰すると、シャンプー市場はtoC市場だけではなく美容院や宿泊施設などを対象としたtoB市場も存在していることに気付くことができる。
フェルミ推定によって、こうしたフレームワーク思考を鍛えることができる。
三つ目の「抽象化思考力」は一言で言うと"単純に考える"力である。
対象の特徴を抽出して単純化して、他の事象にも当てはめていくことで、未知の事象でも過去の経験や知識を駆使して解くことができる。
フェルミ推定の場合、基本的に「考えたこともない」ような問題が出題され、既知の知識や経験を単純化して転用していかなければ解くことができないため、抽象化思考力を向上させることができるのである。
フェルミ推定が役立つシーン
さいごにフェルミ推定が役立つシーンを「抽象化思考」と「仮説思考に基づく概算」という2つの面でご紹介する。
抽象化思考
フェルミ推定で身につく抽象化思考についてサッカーに例えてわかりやすく解説する。
「相手の10番の右足を封じろ」という指示があったとする。
この時、抽象化レベルが低いとどのような状況でも「相手の10番の右足を封じる」ことだけをただ繰り返すことになる。
それが抽象化レベル1になると「10番=最も脅威となる選手」という形に一部を抽象化できている。
最後に抽象化レベル2になると「右足=利き足」という形で構成されている2要素とも抽象化できている。
このように、ある指示や指摘をされた際にどれだけ『抽象化思考』を働かせられるかでその後の仕事のパフォーマンスも成長スピードも大きく変わってくる。
仮説思考に基づく概算
フェルミ推定で身につく仮説思考と、それに基づく概算は以下のように実務でそのまま役立たせることもできる。
例えば、以下のようなことがあげられます。
- 新規事業の市場規模を概算する
- 断片的な情報から競合の売上を推計する
- マーケティング施策の効果を推定する
- 対象プロジェクトでどの程度工数が掛かるかを推計する
このように一部ではフェルミ推定は「くだらない」「意味ない」「役に立たない」と言われているが、フェルミ推定の目的や効果を意識した上で活用することで、多くの効果を得ることができる。
フェルミ推定問題の対策についてはこちらの記事で詳しく解説されているのであわせてご確認いただきたい。
参考:就活で必須!?フェルミ推定問題の対策!例題を交えての徹底解説 | しかくのいろは