"長期的な視点"で相談者のキャリアを支援するコンコードエグゼクティブグループの魅力とは

東京大学、京都大学などの名門大出身者や、マッキンゼー、BCGといったコンサルファーム出身者が、続々と相談に訪れる人材紹介会社がコンコードエグゼクティブグループだ。

同社のキャリア相談を受けた人は、その後もキャリアの節目のたびに相談に訪れるため、1015年もの長期間の付き合いとなる相談者も珍しくない。多くのビジネスリーダーから支持される理由はどこにあるのか。

コンコード代表取締役CEOの渡辺秀和氏は、日本ヘッドハンター大賞初代MVPを受賞し、さらに東京大学におけるキャリアデザインの授業でコースディレクターを務めた経歴を持つ。同社のキャリア支援の特徴と、目指す姿について聞いた。

コンコードエグゼクティブグループ 代表取締役社長 CEO・渡辺秀和さんプロフィール

コンコードエグゼクティブグループ CEO。一橋大学商学部卒業。株式会社三和総合研究所(現:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)を経て、2008年、株式会社コンコードエグゼクティブグループを設立。「コンサル&ポストコンサル転職」を運営する。1000人を越えるビジネスリーダーのキャリアを支援し、日本ヘッドハンター大賞初代MVPを受賞。

コンコードベンチャーズを通じてソーシャルスタートアップへの投資を行なっている。著書の『 ビジネスエリートへのキャリア戦略』(ダイヤモンド社刊)、『未来をつくるキャリアの授業』(日本経済新聞出版社刊)は東京大学の教科書に選定。近著に『新版 コンサル業界大研究』(産学社刊)がある。

コンサルティングファームから日本No.1に選出された転職支援サービス

――相談者はどのような方が多いのでしょうか? 

渡辺:経営者キャリアを目指すビジネスリーダーの方が中心です。

1つは、コンサルティング業界への転職を希望される方々です。戦略系コンサル、総合系コンサル、シンクタンク、財務系コンサル(FAS)、組織人事系コンサルなどへコンサル未経験で目指されます。 

もう1つは、コンサルティング業界からの転職を考えるポストコンサルの方々です。PEファンドや投資銀行などのプロフェッショナルファーム、外資系企業や総合商社などのグローバルカンパニー、ベンチャー企業やオーナー系企業の幹部ポジションへの転職を検討される方が多いです。

――どのくらいの年齢層の方からの相談が多いのですか。

渡辺:20代前半から50代の方まで、年代を問わずご相談にきてくださっています。第二新卒の方もいらっしゃれば、CxOやパートナーなどの経営幹部クラスの方もいらっしゃいます。チーム単位での移籍のご相談をいただくことあります。

――渡辺さんはビズリーチ主催の「日本ヘッドハンター大賞」でMVPを受賞されていますね。

渡辺:私が受賞した「第1回 日本ヘッドハンター大賞」は、企業の人事・採用担当者500人以上からの投票によって選出するという企画でした。コンサルティング業界の人事や採用担当者からご評価いただき、とてもありがたく思います。

――人事や採用担当者の方から支持が得られた理由はどこにあるとお考えですか。

渡辺:ご紹介させていただいた皆さんが、入社後に活躍されていらっしゃるからではないでしょうか。クライアント企業の経営者や、人事のご担当者から「コンコードから紹介してもらった〇〇さんがとても活躍してくれている」と言っていただけると、とても嬉しいですよね。

――転職後に活躍できる理由が何かあるのでしょうか。

渡辺:もちろん、その理由は人によっても異なるので一概にはいえません。ただ、ご相談者の皆さんの多くが、将来のビジョンや転職の目的をしっかり持ったうえで、入社されている点は大きいように思います。

「将来はグローバルカンパニーの経営幹部として活躍したい。そのために必要な経営スキルを身につけよう」といったようなことですね。目的が明確だと、少々困難なことがあっても、粘り強く頑張ることができます。

私たちの会社では、目指す将来ビジョンをご相談者と一緒に考え、それを実現するための「キャリア戦略」を設計することを重視しています。

また、入社後に良いスタートを切れるように、入社前の準備に関するアドバイスもさせていただいています。スタートがうまくいくと、仕事が楽しくなって、ますます頑張れるという「良循環」に入ることができるでしょう。これも転職後に活躍される方が多い理由の1つかもしれません。

望む人生を歩むための「キャリア戦略」を立てる

――お話に出たキャリア戦略とはどのようなものでしょうか。

渡辺:キャリア戦略とは、望む人生を実現するために、経るべきキャリアを定めた中長期的なプランのことです。

例えば、経理として新卒から経験を積んできた30歳の方が、将来は社会課題の解決を目指す起業家として活躍したいと考えていたとします。一般的には、経理職として十分なスキルを身につけていれば、さまざまな企業で活躍できて、素晴らしいキャリアといえるでしょう。

しかし、この先も経理職としてキャリアを積み重ねた場合、この方が望んでいるような、起業家として必要なスキルや経験を十分に培うことができるかというと別問題です。キャリアは一般論で考えても仕方がありません。あくまで、その方の目指すゴールにフィットしているか否かが大切です。

今回の事例でいえば、経理ポジションから、戦略系コンサルや総合系ファーム、FASなどに転職することが1つのプランとして考えられます。

企業経営に関わるスキルや経験を身につけることができて、その後の起業に役立つでしょう。また、それらのコンサルを経験した後で、事業会社の経営幹部やハンズオン・ベンチャーキャピタルを経ることで、起業に必要な実践的なスキルをさらに磨くことも可能となります。

もちろん、どのようなキャリア戦略が適切なのかは、その方のご年齢、ご経験、ご志向などにもよって異なります。 

――なるほど。経理職からいきなり起業するのはハイリスクですが、そのように経験を積んでからチャレンジすればよいのですね。

渡辺:はい、その通りです。一足飛びにゴールに行くことが難しい場合に、適切なキャリア戦略をつくるコツは「キャリアの階段」をつくることにあります。キャリアの階段とは、望むキャリアのゴールに至るために、中継地点につくる足場のことです。

ゴールに向かって一歩ずつ近づくようにキャリアの階段を設計することで、その実現可能性は飛躍的に高まります。 

成功した起業家が、「成功するか否かは、やるかやらないかの覚悟の違いだ。とにかく、はじめることが大事なんだ」といった話をしているのを目にします。

しかし、それはさすがに乱暴な意見だと思います。失うものがなければいいのかもしれませんが、一流企業に在職し、恵まれた収入も得ていて、家族もいらっしゃるという方が、気軽にリスクを取ることはできません。

やはり、多くの方にとっては、ワンステップずつ、着実に歩んでいくためのキャリア戦略が重要になるでしょう。

なお、ここで注意しなければならない、大切なことがあります。在職する企業に対しては、「経験を積ませていただいている」という感謝の気持ちを持つことです。

しっかりと価値を生み出し、組織に貢献することが、キャリア形成の大前提となります。転職する機会が増え、キャリア設計の自由度が高くなった現代だからこそ、特に意識していただきたいと思います。 

――ところで、経理経験しかなくても、難関の戦略ファームに転職できるものなのでしょうか。

渡辺:鋭い質問です。年齢や市況にもよりますが、実は戦略ファームへの転職はポテンシャル採用で入社することも十分に可能なのです。

また、戦略ファームでは、さまざまなプロジェクトを通じて経営課題を解決するための汎用的な問題解決スキルを習得できます。そのため、次の転職時には、事業会社の経営幹部、PEファンド、ハンズオン・ベンチャーキャピタルなどの幅広い選択肢が生まれます。

そのため、戦略コンサルタントは「キャリアの階段」として、とても有力なのです。 

このような、さまざまな業界や職種から入ることが可能で、かつ、さまざまな業界や職種へ転出することが可能となる仕事のことを、私たちは「ハブ・キャリア」と呼んでいます。

――ハブ・キャリアは戦略コンサルタント以外にもありますか。

渡辺:ハブ・キャリアは、戦略コンサルタント以外にも、さまざまな種類があります。

時代によっても変化しますが、次代のハブ・キャリアとして注目を集めているのが、デジタル・IT企業の企画職です。IT領域の新規事業開発やデジタルマーケティングの経験者は、さまざまな業界で引く手あまたとなっています。

事業会社だけではなく、コンサルティング業界やPEファンドでも求められています。もちろん、起業するうえでも有益なキャリアになります。

このようなハブ・キャリアを上手に活用すると、無理なく大きなキャリアチェンジを行なうことができます。ただし、キャリアチェンジには年齢的な制約が出てくる点には注意が必要です。

――やはり、キャリアにおいて年齢は重要ですか。

渡辺:そうですね。やはり、若い方のほうが選択肢の幅が広くなります。最も広いのは、新卒の就職活動の時です。皆さんも、さまざまな業界にチャレンジが可能だったことでしょう。

大切なファーストキャリアで良い選択をするために、少なくとも大学1年生から、できれば高校生のうちから、キャリアについて意識を持ってほしいと私は考えています。

しかし残念ながら、日本の教育環境ではキャリア設計の重要性や設計方法を学べる機会は多くはありません。

そのためコンコードでは、ビジネスリーダーのキャリアのご支援だけでなく、学生向けのキャリア教育事業にも力を入れて取り組んできました。

2017年には、東京大学の正規科目としてキャリアデザインの授業「キャリア・マーケットデザイン」を開講。私はコースディレクターとして、全体企画、コンテンツ制作、講義を担当しました。

また、キャリア設計の考え方を、学生や若いビジネスパーソンへ広くお届けするために『未来をつくるキャリアの授業』(日本経済新聞出版)などの書籍を執筆してきたのも、その一環です。

――新卒時の会社選びも、キャリア教育を受けることで変わりそうですね。

渡辺:そう思います。次代を担う皆さんへキャリア設計法を伝えるべく、今後もキャリア教育に力を入れていく予定です。

キャリア戦略を実現するための選考対策

――先ほど、コンサルファームへの転職の話が出ました。コンサル業界は、一般的に狭き門といわれています。

渡辺:その通りです。キャリア戦略を立てても、それを実現するための転職を成功させなければ、絵に描いた餅に過ぎません。そのため、私たちはコンサルファームやPEファンド、人気スタートアップなど、応募先に応じた選考対策もサポートしています。

これらの難関企業へ応募する際は、書類選考段階から十分な準備が必要です。同じような年齢、職歴の方が同じ企業に応募したとしても、履歴書、職務経歴書、志望理由書など応募書類の書き方によって、合否が分かれることも珍しくありません。

面接対策も同様に、応募先企業の選考に合わせた適切な対策が不可欠です。 

選考対策といっても、等身大以上にアピールをするわけではありません。選考対策の趣旨は、応募者の経歴や人物像を“誤解のないように” “わかりやすく” “聞き手の気持ちをくみながら”説明することにあります。私たちは、その整理をお手伝いしているのです。

――書類選考でも、書き方次第で合否が分かれることがあるのですね。

渡辺:書き方次第で大きく結果が変わります。営業職の方が、コンサルファームへ応募したとします。前年比200%といった営業実績を職務経歴書に記述しても、残念ながらファームの人事には響かないでしょう。

「実績を数字で書くことが大切だ」などとちまたでは言われていますが、実際はそれほど単純ではなく、応募先によるのです。

コンサルファームが採用時に重視しているのは“問題解決力”の高さです。そのため、営業の実績を出すために取り組んだ施策を掘り下げて説明する必要があります。

「このように顧客分析を行い、セグメント別の販売戦略をこのように構築したことによって、前年比200%となる実績をあげた」といった書き方のほうが、ファームが求めている適性があることが伝わりやすくなるでしょう。 

――コンサルファームへの転職では必須といわれている「ケース面接」の対策は、どうされているのですか。

渡辺:ケース面接は、座学で問題解決のアプローチを学ぶだけでなく、口頭での実践トレーニングが重要です。書籍や、講義形式の対策だけでは、インタラクティブな対策ができないため、ケース面接の本番を突破することは困難だと思います。

また、複雑すぎる解法を教わっても、面接本番で話すことは難しいでしょう。 

私たちは、外資系戦略ファームへ数多くの内定者を輩出してきた実績に裏打ちされたオリジナルのケース面接対策メソッドを用意しています。

習得しやすいセオリーと最新情報に基づき、実践的なケース面接対策をマンツーマンで行っています。もちろん費用は無料です。

紹介先企業との強固な信頼関係があるからこその“特別紹介ルート”

――キャリア戦略を立て、応募先企業に合わせた対策を実施することで、転職を成功させているのですね。

渡辺:それだけではありません。コンサルファームへの転職やエグゼクティブの転職では、“誰”が“誰”に推薦するのかによって、募集ポジションや選考プロセスが変わってきます。応募ルートが転職の成否に大きな影響を与えるのです。

私たちは、クライアント企業の戦略を理解し、採用に関するアドバイスを行うといった関係を構築しています。そのため、さまざまな企業の経営陣やキーマンへ直接推薦したり、打診したりすることができるのです。

ご相談者がいらっしゃったときに、フィットする条件の求人が出ていなくても、その方が活躍できそうだと考えた場合は企業の経営陣へ積極的に提案をしていきます。実際、私たちの提案によって、新しいポジションが創設されることも珍しくありません。

――企業の経営陣と密な関係性を構築しているのですね。

渡辺:そうですね。これまでに、豊富なご紹介実績があるというだけでなく、私たち経由で入社されたご相談者が、採用企業の経営幹部や採用責任者となっていらっしゃるということも、とても大きいと思います。

先日、個人事業主としてご活躍されていた40代半ばの方が、転職相談にいらっしゃいました。コンサルは未経験でしたが、弊社経由で著名な外資系ファームへご入社されています。

一般的には、コンサル経験を持たない40代の方は、書類選考を通過することも大変です。しかし、元ご相談者のシニアパートナーへ直接打診したことで、良いご縁となりました。 

――40代未経験でファームへ入社するというケースは本当に珍しいですね。その他にも、御社がキャリア支援で大切にしていることはありますか。

渡辺:短期的な業績にとらわれずに、“誠実なご支援”を行うことを、私たちは大切にしています。

ご相談者が弊社経由で内定を獲得した場合でも、その話を無理にすすめることはありません。むしろ、自主応募先や他エージェント経由の内定のほうが、ご相談者の方にとって良いと思う場合は、そちらを選ぶことをお勧めしています。

ご相談者が望む人生を歩むためのご支援をすることを重視しているからです。

この価値観は、ご相談者のためであると同時に、私たちコンコードのスタッフが誇りをもって仕事をするうえでも大切なものです。

――そのようなことをしていては、会社としては売り上げとならないので、痛手となるのではないのでしょうか。

渡辺:ご相談者の方からも、そのように心配されることもあります(笑)。しかし、実際には問題ありません。私たちにご相談に来てくださった方々の多くは、一度きりのキャリア支援というお付き合いで終わりません。

その後も情報交換を兼ねて連絡を取り合っていますし、転職を考えた際にはご連絡をくださいます。それだけでなく、ご家族やご友人など、大切な方々をご紹介いただくこともあります。

長期的な視点に立てば、事業としての収益は、このような“健全な関係性”の中から十分にいただくことができると考えています。

――家族をエージェントに紹介するというのは、満足度の高さがうかがえるエピソードですね。ご紹介以外では、どのような形で相談に来る方が多いのですか。

渡辺:ご紹介以外ですと、『未来をつくるキャリアの授業』や『コンサル業界大研究』(産学社)などの書籍を読んで登録してくださる方も多いですね。

また、私たちが大学で実施したキャリアデザインの授業を受講した方が、社会人になって数年経ち、悩まれた際に相談にきてくださる場合もあります。このような形で毎日多くの方からのご相談依頼をいただいているため、スカウトなどはしておりません。

――スカウトなしで集客とは、人材紹介会社としては、珍しいですよね。

渡辺:そうですね、とても珍しいと思います。

本来であればスカウト作業に取られてしまう時間を、ご相談者の支援に使うことができるため、とても良いことだと考えています。

また、コンコードでは、以前のご相談者が企業の採用責任者となり、採用のご相談をしてくださることも多いです。そのため、企業開拓と呼ばれる、いわゆる“営業”もほとんどしていません。

――営業もしないのですか。それはすごいですね。

渡辺:ご相談者やクライアント企業の皆さんのおかげです。とてもありがたいことです。

コンコードのエグゼクティブコンサルタントに求められる資質

――転職や採用企業からの相談がそれだけ多いということであれば、御社のスタッフも、もっと必要となるのではないでしょうか。

渡辺:数多くのご相談者や、採用企業のご期待に応えるためには、多くのエグゼクティブコンサルタントが必要です。そのため、私たちは創業当時から、採用活動に力を入れています。

しかし、採用は慎重に行う必要があります。組織を無理に拡大してしまえば、質が低下してしまう可能性があるでしょう。ご相談者にしっかりと寄り添うことができなくなってしまっては、本末転倒ですから。

――御社のエグゼクティブコンサルタントを志望する方に、求めていることは何でしょうか。

渡辺:人への思いやりがある方を求めています。ただ優しいということではありません。「愛情深い」という表現のほうが合っているかもしれません。

選考対策などにおいては、ご相談者のために踏み込んでアドバイスをしなければならない局面も出てきます。大切な兄弟や姉妹が相談にきたのであれば、少々耳の痛いことであっても、相手のために伝えますよね。それと同様の感覚です。もちろん、相手が受け取れるように、上手に伝えることも大切です。

さらに、ご相談者の抱えるキャリア上の課題を解決していくためには、高い問題解決能力や、粘り強く取り組むマインドも欠かせません。

採用のハードルは高いと自覚していますが、すべてはご相談者の方や、採用企業のために大切なことだと思っています。

――御社のホームページを拝見すると、コンサル出身者が多いですね。

渡辺:そうですね。確かに、BCGやベイン、DTCなどのコンサルファーム出身者が、数多く参画しています。しかし、コンサル経験は必須ではありません。あくまで先ほど申し上げたような人物面や価値観を重視した採用を行っています。

しかし、私たちの仕事はキャリア支援のプロとしてのスキル習得、問題解決能力、自己管理能力が求められます。そのため、プロフェッショナルファーム出身者がフィットしやすいのだと思います。

――人材紹介業界の経験は、問わないのでしょうか。

渡辺:それは全く問いません。先ほどお話しした通り、コンサルファーム出身者が多いですし、国家公務員や大手企業、PEファンドの出身者もいます。人材紹介業界を経験している人のほうが少ないです。

――人材紹介の経験を問わないということですが、どのようにキャリア支援のスキルを習得するのですか。

渡辺:「CORE研修」という、1カ月半に及ぶ育成プログラムが用意されています。キャリア支援のプロとして、早期に活躍できるように設計された、弊社の特別プログラムです。

ご入社いただいた際には、人材紹介の経験の有無を問わず、全員がCORE研修に参加します。

キャリア設計法や選考対策のスキル、適切な応募方法、採用企業へのアドバイス法、コンサル・投資銀行・PEファンド業界に関する知識、データベース活用のスキル、さらにはプロフェッショナルとしての在り方に至るまで、多岐にわたるノウハウを座学と実践トレーニングの両方を通じて習得していくのです。

コンコード独自のナレッジであるため、他の人材紹介会社からジョインした人たちは、「前職で身につけた考え方や手法とは全く異なっている」と驚いていますね。

――研修を受けて現場に出た後は、どのように過ごしていくのでしょうか。

渡辺:CORE研修後は、エグゼクティブコンサルタントとしてデビューします。現場に出た後も、毎日の少人数制の定例ミーティング、週1回のマンツーマンでの対話型面談、週次の全体会議、フォローアップ研修など、社員全員が成長できるように、さまざまな体制を整えています。

もちろん、日常的に上司や先輩社員たちからサポートを受けることもできます。知識面のみならず、どのようにご相談者や採用企業の幹部と関係性を深めていくのかといった実践的な悩みについても、安心して相談できるカルチャーがあります。

社会起業家を応援する、ソーシャルスタートアップ支援事業「コンコードベンチャーズ」

――ソーシャルスタートアップ支援事業についてもお話をお聞かせください。

渡辺:コンコードのご相談者の中には、将来的に社会起業を考えている方がたくさんいらっしゃいます。そのため、転職先で経験を積んだ皆さんから、「いよいよ起業したいので、事業計画を見てほしい」「組織の運営や採用について話を聞きたい」といった、相談をいただくことが増えました。

そのような皆さんを応援したいと考え、ソーシャルスタートアップ支援事業「コンコードベンチャーズ」を運営しています。

――具体的には、どのようなご支援をされているのでしょうか。

渡辺:スタートアップへの出資とあわせて、経営戦略やマーケティング、ブランディング、営業体制の整理など、さまざまなハンズオン支援をしています。

また、過去にサポートしたご相談者の皆さんは、PEファンド・VC・起業家・メディア・大学など各界のエグゼクティブとして活躍していらっしゃいます。このネットワークを活かして、営業先や資金調達のチャネルを紹介することも可能です。

もちろん、スタートアップに対して、COOCFO・事業開発部長などのポジションで即戦力となる人材や優秀なポストコンサルの紹介もできます。

――現在出資されている企業はどのようなところですか。

渡辺:現在は10社超に出資をしています。支援先企業は、映像クリエーター向けのプラットフォーム事業を行うVookや、日本の漫画を世界に発信する東大発のAI翻訳企業Mantraなどです。その他にも、地方創生、次代の教育サービスの普及、交通問題の解決に取り組んでいる企業などがあります。

業種やサービスはさまざまですが、社会課題解決に挑戦する起業家を応援しています。

キャリアデザインの力で、日本を真に豊かな社会へ

――先ほどお話が出ていましたが、貴社はキャリア教育にも取り組んでいらっしゃいます。

渡辺:キャリア設計の手法を広く知っていただくために、書籍を出版したり、東京大学や一橋大学などで授業を行ったりして、キャリア教育活動に取り組んできました。

さらにキャリア教育活動を加速させるために、グループ会社「コンコードアカデミー」を設立しました。名門大学の学生向けにキャリア教育を展開しています。

――キャリア教育に取り組んだきっかけは何でしょうか。

渡辺:私は20年以上前からビジネスリーダーのキャリアデザインを支援してきました。その中で、ご相談者の皆さんから「おかげさまで人生が変わりました。でも、可能であればこの考え方をもっと若い頃に知っておきたかったです」というお話をたびたびいただいていました。

まさにご指摘のとおりで、若いうちからキャリアを意識したほうが、選択肢の幅も広い上に、効果的なキャリアデザインが可能になります。

キャリアデザインは、どなたにとっても重要であるにもかからず、日本の教育環境ではそれを学べる機会が十分にありません。日本社会全体にとって、大きな損失であり、とてももったいないことだと思っています。このことを社会課題と捉えて、キャリア教育活動に尽力してきました。コンコードを設立した理由の1つでもあります。

――大学でキャリアデザインの授業を行ってみて、いかがでしたか。

渡辺:「学生時代はバラ色、社会人は灰色だと思っていました」――これは、東京大学で授業をおこなった際のアンケートに書いてあった言葉です。この学生だけではなく、異口同音に社会に出ることへの不安が、アンケートには並んでしました。

日本を代表するような名門大学でも、社会人人生に明るい希望を持っている学生の割合がけっして高くはない。大学での授業を通して、キャリア教育の重要性を確信すると同時に、もっともっと広く届けなければいけないと痛感するようになりました。

――コンコードアカデミーでは、具体的にはどのような内容を伝えているのですか。

渡辺:コンコードのキャリア教育で重視していることは、「キャリアデザイン」と「社会に出る準備」の2つです。いずれも、豊かなキャリアを歩む上で大切なことですが、現代の日本の教育ではぽっかりと抜けています。

新卒入社した若手社員の3人に1人が3年以内に辞めてしまうという問題は、実は25年以上も続いています。今どきの若い人が我慢強くないから……と考える方もいらっしゃいますが、実際にはずっと以前から起こっている根深い問題なのです。

新卒社員の早期離職で最も多い理由は、「自分の志向と合わない仕事に就いてしまったから」です。次に多い理由が、「上司やクライアントとの関係がつらくなったから」というものです。けっして、本人が望んで早期に離職しているわけではありません。

――自分の志向と合う仕事は、どのようにすれば見つけられるのでしょうか。

渡辺:自分のやりたいことを見つけるためには、自分の価値観とじっくり向き合う必要があります。それはとても時間がかかることで、一朝一夕にはできません。就職活動に直面する3年生になってから、キャリアについて考えはじめるのでは、間に合わないでしょう。

自分の価値観や「好き・嫌い」を把握するためには、日々感じたことを日記につける、授業や友人、書籍、映画などから受けた刺激をもとに考えたことを記録する、といった内省する時間が大切です。さらに、見つけた「好き・嫌い」についての仮説検証も不可欠となります。

「好き・嫌い」を探るのは、少なくとも大学12年時には開始したほうがよいでしょう。そのため、コンコードアカデミーの運営するキャリア教育サイトでは、東京大学で行った授業の内容をベースにして、1年生から学べるコンテンツを豊富に取りそろえています。

――では、上司やクライアントとの関係を良好にするためには、何をしておけばよいのでしょうか。

渡辺:志望する企業へ入社したけれど、仕事で思うように成果があがらない。その結果、上司や顧客から叱られることが増えて、職場へ行くのがつらくなった……という話は珍しくないですよね。

このような現象が起こってしまう大きな原因は、学生時代に「社会に出る準備が十分にできていないこと」にあります。大学卒業までに学んできたことと、社会で求められるスキルや知識とのギャップの大きさに悩む若手社会人は多いです。

かくいう私も、ギャップに驚いた一人です。心当たりがある方は多いのではないでしょうか。

もちろん、企業も新卒社員に対して、それほど高い成果を求めているわけではありませんよね。簡単な資料作成の基礎スキルを身につける、教えられた業務を実践する。あるいは、しっかり報連相するといった他者と協働するスタンスを身につけていれば、怒られることは少ないでしょう。

しかし、そのような基本ができていないと、教える上司や先輩社員にもストレスがたまります。報告や相談がないとサポートができませんので、クライアントからのクレームにつながるリスクもあります。

学生時代までは、授業を聞いて勉強し、1人でアウトプットする力をしっかり磨いてきていますが、このような協働するスキルは培う機会は豊富ではありません。そのため、会社に入ったあとでスムーズに立ちあがるためには、学校での勉強とは別に、社会に出るための準備をしておく必要があるのです。

そこで学生へお勧めしているのが、「長期インターン」への参加です。長期インターンでは、半年~2年程度の期間、実務に従事します。若手社員と同様に、上司や先輩社員への報連相やベーシックな資料の作成、ビジネスライティングなど、社会に出た後で必須となる力を磨くチャンスを得られます。

基礎的なビジネススキルや協業するスタンスを身につけてから入社すれば、短期間で一定の成果が出やすくなります。顧客や周囲の先輩社員からも喜んでもらえて、仕事が楽しくなります。そうなれば、努力するモチベーションが自然に湧き、ますます成果があがるという「良循環」に乗ることができるのです。

社会で幸せに活躍するためには、この良い循環に乗ることが大切です。長期インターンの経験は、社会人として良いスタートを切る上で、大いに役立つことでしょう。 

現在、コンコードアカデミーでは、長期インターンの機会を学生の皆さんへ提供する社会貢献のプロボノ活動を行なっています。ESG投資ファンド、国際的な活動を行うNPOAIスタートアップ、ベンチャーキャピタルなどの皆様にご協力いただき、長期インターン情報を掲載しています。

まだ活動規模は小さいですが、学生からの反応は非常に良く、国内だけでなく、海外の大学に在籍する日本人留学生からも問い合わせが寄せられています。 

――グループ全体としては、今後どのような事業展開を目指されているのでしょうか。

渡辺:「自分の好きなことや志を通じて、周囲の人々や社会を幸せにして、恵まれた収入も得る」――このような生き方をする人であふれる社会づくりに貢献したい。そのように考えて、2008年に私はコンコードを創業しました。

キャリアデザインの力は、日本を豊かな社会に変える鍵になると、私は考えています。

もちろん、一人ひとりが望む人生を歩めるようになるという意味で、とても豊かな社会になるでしょう。しかし、それだけではありません。

優れたキャリア戦略を持つことで、必要なスキルや経験が積み重なり、生み出される付加価値が高まるようになります。これは、一人あたりの労働生産性が伸び悩み、少子化が進む日本を活性化するうえで、とても大きな意味を持つはずです。 

キャリアデザインの考え方や社会で働くことの素晴らしさを、次世代へ伝えていくため、引き続きキャリア支援やキャリア教育活動に尽力していくつもりです。今後さらに人材の流動化が進みます。

都心から地方への移住、兼業・副業、定年後のエグゼクティブキャリアなどの新しいテーマも含めて、キャリア支援を行っていく必要があるでしょう。また、キャリア教育活動は、全国の大学へ浸透させ、さらには中学や高校へ広げる必要があります。 

そのために、全国の企業や教育機関との更なるネットワーク構築、人員の拡充やデジタルトランスフォーメーション(DX)によって、皆さまのご期待に応えられる組織体制を整えたいと考えています。

――本日は長時間、ありがとうございました。

渡辺:こちらこそ、ありがとうございました。

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