コンサル業界は守秘義務もあり、外部にいるとその実態が見えにくく、コンサル業界について理解できている人は少ない。
実際、戦略コンサルと総合コンサルという言葉が独り歩きしており、それぞれの違いを正確に説明できる人は決して多くない。
本記事では、戦略コンサルと総合コンサルの両方を経験した方々へのインタビューを踏まえてその違いについて徹底的に解説していく。
本記事を作成するにあたっては、実際に「BCGとアクセンチュア」「BCGとデロイト」を経験した方々にインタビューを行っている。
- 戦略コンサルと総合コンサルの動向
- 戦略コンサルと総合コンサルの様々な違い
- 戦略コンサルと総合コンサルのそれぞれのメリット
コンサルへの転職を目指す上では、おすすめのコンサル転職エージェントの記事を参考にして頂きたい。
Contents
戦略コンサル・総合コンサルの分類
まず、コンサルファームにおいて一般的に言われている分類についてご紹介する。
▼主要戦略コンサルファーム
▼主要総合コンサルファーム
▼主要IT系コンサルファーム
アビーム、日本IBM、ベイカレント、クニエなど
過去における戦略コンサルと総合コンサルの違い
これまでの歴史を辿ると、戦略系コンサルと総合系コンサルとでは扱う案件が大きく違っていた。
まだコンサルティング産業が初期のころ、マッキンゼーやBCG、ベインなどの戦略コンサルは、CEOやそれに近いポジションの役職に対して、経営戦略や組織課題について提言を行っていた。
一方総合コンサルのアクセンチュア、デロイト、PwC、KPMG、EYについては会計事務所を出自としており、主に監査クライアントに対して、財務会計に基づく提言を行っていたという違いがある。
ところが、1990年前後にはERP導入支援の市場が急拡大し、ITコンサルという新たな金脈を見つけた総合コンサルに対して、何等かの手段を講じる必要性に駆られた。
そこで、戦略コンサルファームは以下のような動きにでる。
- マッキンゼー:ITコンサルであるICGを買収
- A.T.カーニー:ITサービス大手のEDSの傘下に入り、戦略コンサルとITコンサルの融合を図る
しかし、戦略コンサルとITコンサルを手掛ける企業の融合はあまりにも難易度が高く、両社の取り組みは失敗に終わっている。
そうした背景からか、急速な規模追わないファームとそうでないファームに分かれ、前者はより単価の高い戦略系案件を手掛けることに注力し、後者はITコンサルを始めとした幅広いサービスを展開し、成長を加速させていった。
戦略コンサルと総合コンサルの違いは徐々になくなりつつある
拡大する市場をうまく取り込めた総合コンサルは、更に勢力を拡大し徐々に戦略コンサルの領域を侵食していった。
そして、総合コンサルが戦略コンサルを買収するニュースが話題を集めた。
- デロイト:マイケルポーターらが立ち上げた戦略コンサルであるMonitor Groupの買収
- PwC:高いプレゼンスを誇る戦略コンサルであるStrategy&(旧ブーズ・アンド・カンパニー)の買収
この頃には両陣営はお互いを意識したコメントを残している。
デロイトとPwCの戦略コンサルティング部門のトップは「マッキンゼー、BCG、ベインとは日常的に競合しているし、将来的にはさらにそうなる」と回答。一方ベインのトップは「BIG4コンサルファームとの競争は過去数年あるにはあったが、それはほんの数%だ」と話している
The Economist『To the brainy, the spoils』
実際、この頃から戦略コンサルの多くが、総合コンサルと同様にサービスラインや採用数の拡大を行っており、マッキンゼーやBCGも、アクセンチュアやデロイトに追随する形でデジタル組織の立ち上げを行っており、違いが薄れている状況である。
その際、総合コンサルから多くの人材を引き抜いたことは有名な話である。
逆にサービスラインの拡大を行わなかった戦略コンサルは、一昔前は高いプレゼンスを確立していたものの、今では衰弱しているとの噂も流れている。
ちなみに某戦略コンサルファームは総合コンサルファームをチームごと引き抜き、今ではメンバーの1/3程度が総合ファーム出身者になっているとのことで、こうした動きも戦略コンサルと総合コンサルの違いの境目をなくしている。
戦略・総合コンサルの違い:案件比率
上記はコンサルファームの分類別でマネジメントレイヤー別の案件比率を表したイメージである。
あくまでイメージであり、個社別で見ると異なる可能性があるという点は注意頂きたい。
上記を踏まえると、戦略コンサルと総合コンサルの明確な違いは「CEO/COOレイヤーの案件比率」と「係長/主任レイヤーの案件有無」である。稀に「戦略コンサルはCEO/COOレイヤーがメイン」という謎の謎の発言をする人がいるが、実態としては全体の15~20%程度に過ぎない。
「戦略コンサルはCEO/COOレイヤーがメイン」という人ことはコンサル現場のリアルを知らないと思って差し支えない。
戦略コンサルでも総合コンサルでもCEO/COOレイヤーの仕事は複数あるが、全体で見るとかなりマイノリティーということである。
ただし、戦略コンサルと総合コンサルと比較するとCEO/COOレイヤーの仕事が3~4倍の比率となっているという点が大きな違いである。
また、「本部長/部長」「部長/課長」レイヤーの案件比率というのは、戦略コンサルと総合コンサルでそこまで大きく違わないというイメージである。
とくに近年では戦略コンサルがレイヤーを下げた案件獲得に動いていることもあり、徐々に比率差がなくなってきている。
一方で、「係長/主任レイヤーの案件」では、戦略コンサルが手掛けていることはほとんどない状況である。
戦略コンサルファームについて業界外からよくされる「戦略専業」という誤解。 pic.twitter.com/q7vYNtwKt0
— コンサルマン (@mr_grayhair) August 9, 2021
戦略・総合コンサルの違い:年収
上記は「戦略コンサルファーム」「グローバル総合コンサルファーム」「日系総合コンサルファーム」「シンクタンク系」というカテゴリ別のタイトル別目安年収である。
厳密にはタイトル内でも年収レンジがあり、かつ上記カテゴリの中でも年収差はあるものの、概略を掴む上の参考情報として見て頂きたい。
コンサルファーム内では年収は「ランク(=役職)」と「評価」によって決まってくると説明したが、コンサルファーム間を見ると、やはり戦略コンサルファームが頭一つ抜け出している状態である。
グローバル総合コンサルファームも一時は「打倒戦略ファーム」を掲げて年収水準を引き上げていたというが、それでも違いが明確に存在する。
実際、「BCGとアクセンチュア」「BCGとデロイト」という戦略コンサルと総合コンサルの両方を経験した方々に、両者の「年収」の違いを聞くと以下のような話があがっていた。
コンサルの年収はランクに紐付きますが、戦略コンサルのほうが実力主義の色が濃いので、そうした要因も戦略コンサルと総合コンサルの年収の違いを生んでいます。
BCG・アクセンチュアでの勤務経験者
戦略コンサルの場合は4-6年程でマネージャーして年収は2,000万弱に到達しますが、総合コンサルの場合年収2,000万円に辿り着くのに10年以上掛かるので水準感はかなり違うイメージです。
BCG・デロイトでの勤務経験者
戦略・総合コンサルの違い:仕事の進め方
ここでは「BCGとアクセンチュア」「BCGとデロイト」という戦略コンサルと総合コンサルの両方を経験した方々に、両者の「仕事の進め方」の違いをお聞きした内容をご紹介する。
戦略コンサルは狭く深く仕事を進め、論点思考の考え方が大事。思考の深さや洞察力でクライアントに貢献する。一方で総合コンサルは広く浅く仕事を進め、MECEな考え方が大事。プロジェクトを前進させる力がクライアントに貢献するといった違いがあります。
BCG・アクセンチュアでの勤務経験者
戦略コンサルは質の高さを重視し、総合コンサルは量の多さを重視するような違いがあると思います。どちらが良い・悪いではなく、そもそもクライアントのニーズが違う点が大きいのかなと思います。
BCG・デロイトでの勤務経験者
戦略・総合コンサルの違い:昇進スピード
ここでは「BCGとアクセンチュア」「BCGとデロイト」という戦略コンサルと総合コンサルの両方を経験した方々に、両者の「昇進スピード」の違いをお聞きした内容をご紹介する。
戦略コンサルは早ければ1年単位で昇進が可能な世界で"飛び級"もあるが、総合コンサルは早くても2年単位で昇進でいわゆる"飛び級"はほとんどないという違いがあります。
BCG・アクセンチュアでの勤務経験者
もちろん総合コンサルも実力主義ですが昇進までの基準期間というものが設けられているので、良くも悪くもその期間に該当しないと昇進できません。一方戦略コンサルはそういった期間的な基準がないというのが違いかなと思います。
BCG・デロイトでの勤務経験者
戦略・総合コンサルの違い:社員の特性
ここでは「BCGとアクセンチュア」「BCGとデロイト」という戦略コンサルと総合コンサルの両方を経験した方々に、両者の「社員の特性」の違いをお聞きした内容をご紹介する。
完全な主観ですが、戦略コンサルファームは育ちがよく、小さい頃から積み上げてきた成功体験を糧に活躍する社員が多い一方、総合コンサルは挫折の経験数が多ければ多いほど活躍する社員が多いという違いを感じています。
BCG・アクセンチュアでの勤務経験者
総合コンサルのほうが中和な人が多い印象で、一方の戦略コンサルは戦闘民族っぽい人が多いという違いがあります。
BCG・デロイトでの勤務経験者
戦略コンサルを選ぶメリット
実際に「BCGとアクセンチュア」「BCGとデロイト」という戦略コンサルと総合コンサルの両方を経験した方々に、総合コンサルではなく戦略コンサルを選ぶメリットを伺った。
1.年収水準の高さ
前述の通り、同じポジションでも戦略コンサルは総合コンサルの1.3-1.4倍程度の年収水準となっている。
かつより実力主義の環境であり、実力があれば昇進スピードも早くなるため、仮に同スペックの人が戦略コンサルと総合コンサルのそれぞれに入社した場合、その年収差は1.3-1.4倍以上開くことになる。
2. プロフェッショナルな環境
総合コンサルももちろんプロフェッショナルな環境であることは間違いないが、相対的に戦略コンサルのほうがよりプロフェッショナルを追求した環境であるようだ。
戦略コンサルでは妥協が一切なく、365日24時間クライアントファーストな世界。本当の意味でのプロの世界で仕事ができる環境だと思います。
BCG・アクセンチュアでの勤務経験者
3. 社員のレベルの高さ
総合コンサルと戦略コンサルではそもそもコンサルティングの性質が異なることから、レベルの上下ではなく質が異なるという話もよく聞く。
しかし総合コンサルと戦略コンサルのどちらも経験した方々からも以下の話があがっていた。
総合コンサルと戦略コンサルで人材のレベルが異なるという点は強く感じました。もちろん総合コンサルに所属する全ての人が、戦略コンサルに所属する人の劣るということではありませんし、戦略コンサルに移っても圧倒的に目立つだろうなという人もたくさんいます。ただ、平均的にみるともともと戦略コンサルの方がレベルが高く、そうした環境で働けることは大きな魅力だと思います。
BCG・デロイトでの勤務経験者
総合コンサルを選ぶメリット
一方で、戦略コンサルではなく総合コンサルを選ぶメリットについて以下のような点があがった。
人を育てる文化
総合コンサルのほうが戦略コンサルと比較して人を育てる文化があるようだ。
それは「社員の特性の違い」の章でもご紹介したが、総合コンサルのほうが"中和な人"が、戦略コンサルは"戦闘民族っぽい人"が多いというところにも現れている。
総合コンサルと戦略コンサルの両方を経験してみて、総合コンサルは人を育てる文化があるなということです。新卒やコンサル未経験者にはよい環境だと思います。
BCG・デロイトでの勤務経験者
相対的に心理的安全性のある組織
「人を育てる文化がある」にも繋がるが、Up or Outの文化が薄い総合コンサルは戦略コンサルと比較して心理的安全性が高い組織であると言える。
そうした側面の違いも総合コンサルを選ぶメリットとしてあるようだ。
若いうちはいいですが、家庭を持つと仕事だけに100%の時間を使えないこともあります。総合コンサルは長期的な人生を考えたときに戦略コンサルよりも相対的に心理的安全性があるのは大きなメリットだと思います。
BCG・デロイトでの勤務経験者
人を育てる文化
総合コンサルのほうが戦略コンサルと比較して人を育てる文化があるようだ。
それは「社員の特性の違い」の章でもご紹介したが、総合コンサルのほうが"中和な人"が、戦略コンサルは"戦闘民族っぽい人"が多いというところにも現れている。
総合コンサルと戦略コンサルの両方を経験してみて、総合コンサルは人を育てる文化があるなということです。新卒やコンサル未経験者にはよい環境だと思います。
BCG・デロイトでの勤務経験者
幅広いネットワークを形成できる環境
戦略コンサルも規模を拡大しているファームもあるが、それでも規模の大きさは総合コンサルには劣後している。
総合コンサルに入社すると、それだけ優秀な人材と幅広いネットワークを形成することができるという違いがあるようだ。
総合コンサルでこれだけ優秀な人たちと幅広いネットワークを形成できるのはビジネスパーソンとして大きな財産だなと強く感じています。
BCG・デロイトでの勤務経験者
コンサルファームではケース面接を始めとする特殊な選考が行われ、非常に難易度が高いと言われている。 また、コンサル業界自体が外から見えづらい業界であるため、転職前にリアルな実態を把握することも難しい。 そのため、「コンサル転職の成功率を上げる」「コンサル転職を通じて理想のキャリアを実現する」上では、コンサル業界への知見や対策ノウハウを持つエージェントを選ぶことをおすすめしたい。コンサルへの転職を成功させるためには
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