コンサルティング業界は非常に流動性の高い業界であり、在職数年で力をつけて次のステージに進むという方も多い。
本記事ではコンサルのキャリアパス/転職先を徹底的に解説していく。
本記事を作成するにあたっては、実際にコンサル出身者複数人にインタビューを行っているためぜひ参考にして頂きたい。
- コンサル出身者のキャリアパスの特徴
- コンサル出身者のキャリアパス/転職先の選択肢
- ファーム別/ポジション別のキャリアパス/転職先
コンサルのキャリアパスを考える上でぜひ本記事を参考にして頂きたい。
Contents
コンサル出身者のキャリアパスの特徴
コンサルティングファームを卒業した後のキャリアパスは多岐に渡るが、どのようなキャリアパスを期待できるのだろうか。
本章ではコンサル卒業後のキャリアパスの特徴について解説しよう。
転職先の選択肢が広い
コンサル出身であれば基本的に転職先で困ることはあまりない。
ファーム在籍期間が短すぎたり、転職頻度が高いと転職活動の面接中に深く質問されることがあるが、基本的にはコンサルファームで数年働いた実績と業務内容をしっかりと語ることさえできれば、あらゆる業界/業種の企業からオファーを貰えると思ってもらってよいだろう。
異業種への転職に成功するのはジュニアなコンサルタントまで
コンサルタントが転職をする際、最終職位が何だったのかは気にするべきポイントだ。
マネージャー未満のコンサルタントは、即戦力だけではなくポテンシャルを見られて採用されるケースが実は多い。
年齢が若ければ若いほどこの傾向は強く、20代後半までの転職は、ポテンシャルを見られているので領域が異なる業界にチャレンジすることが許されている。
一方、最終職位がマネージャー以上の場合、年齢に関係なく即戦力として転職先から期待されることが多いため、これまでの業務内容とは違う領域の仕事内容を求めて異業種へ転職活動をしても失敗するケースが多分にあるので注意しよう。
戦略コンサル出身者は、経営幹部のオファーが多い
戦略コンサル出身者は、上場前のスタートアップ企業のCXO候補のヘッドハンティングが多く、直接経営を任せられるポジションを用意されることが多い。
一方で、総合・IT・人事・会計コンサルファーム出者は上記のポジションでオファーをもらうことがそこまで多くない。戦略コンサルは少数精制でプロジェクトを廻すことが多く、国内最大規模のBCGでもコンサルタントの人数は1,000人程である。
一方、Big4やアクセンチュアの社員数は、増加傾向にあり、国内で1万人規模のコンサルタントを有しているファームは少なくない。
そのため、希少価値の高い戦略コンサル出身者はスタートアップやベンチャー企業の経営幹部として紹介されることが多い。
コンサル出身者が転職先で評価される理由
コンサル出身者は転職先で活躍できているのか。
コンサルタントのキャリアを目指す人だけでなく、現職コンサルタントも気になる質問だろう。結論、一人一人のコンサルタントにもよるが、総じて転職先で活躍しているコンサルタントは多いと言える。
なぜ、コンサル出身者は転職先で評価される傾向にあるのか。コンサル出身の著者が独自の視点で分析した理由を紹介しよう。
仕事のスピードが速い
コンサルタントは、期日までにアウトプットを出すことを日々求められている。
1週間でゼロベースから提案書を完成させたり、翌日までにプロジェクトの全体計画書をクライアントに提出するなど、日々クライアント・上司から短納期の期日を求められることが多い。
そのため、コンサルタントは早期に仕事を終わらせるマインドが備わっており、数年コンサルファームで働けば、1日要する作業も数時間で終わらせられるスキルを習得できる。
仕事を終わらせるスピード力が転職先でも評価されている一つの理由として挙げられるだろう。
周りを巻き込んで前に進められる能力
コンサルが転職先で評価される二つ目の理由は、推進力だ。
コンサルタントは、クライアントを巻き込んでプロジェクトを推進することが求められ、自分が何もしないとプロジェクトが停滞する危機感をもっている。
また、クライアントからの評価や視線が常に気になる環境に身を投じているため、プロジェクトを前に進めようとする姿勢が身についている人が多い。
ステークホルダーを巻き込みながらプロジェクトを推進させ、常にプロジェクトの中心に自分がいると思いながら仕事をしてきたプロフェッショナルマインドが、転職先でも重宝され高評価を得られている理由であろう。
ビジネス戦闘力が高い
ビジネス戦闘力の定義にもよるが、コンサルタントは総じてビジネス素質が高いために転職先でも活躍している人が多い。
新しいプロジェクトにアサインされた時の業界・業務理解のスピードやプロジェクト体制やステークホルダーの関係性理解など、早期に理解をしてバリューを発揮することができるため、転職先でも重宝されることが多い。
コンサル出身者のキャリアパス(転職先)全体像
コンサルティングファームを卒業した後のキャリアパスは多岐に渡るが、実際どのようなキャリアを目指す人が多いのか。
本章ではコンサル卒業後に人気の高いキャリアパスについて解説しよう。
1.競合コンサルファーム
最も多いパターンが競合コンサルファームへの転職だ。
一つ上のポジションでのオファーや、現職の年収よりも上乗せされた金額を提示されることが多く、年収アップを見込んで他社に転職する人が多い。
ただし、総合系から戦略系、もしくは戦略系から総合系への転職は少なく、総合系から総合系ファームへの転職が最も多い。
なお、パートナークラスが競合他社に転職することは容易ではない。
ファームによっては、パートナー昇進時に競合他社への転職を一切認めない契約書を書かされ、違反した際は多額の賠償責任を負わされるケースもあるので注意したい。
2.事業会社の経営企画(日系/外資系)
業種・企業規模問わず、コンサルのキャリアパスとして事業会社の経営企画や事業企画部門に転職するケースも多い。
何かしらの理由でコンサルタントとして働き続けるのが難しくなったり、そもそもコンサルティングファームに長年勤務することを想定していなかった人がこのパターンに該当する。
年収ダウンするケースが多いが、年収以外の働き甲斐やワークライフバランスを求めている人が多い。
ちなみに、「外部から支援するのではなく、自分で事業を作る側に廻りたいので転職した」と言及されている人も多いが、実態は「コンサルは飽きた」「ワークライフバランスが大事」「レベルの下げた環境で重宝される人材になりたい」「コンサルを使う側に廻りたい」の理由のどれかに該当すると思われる。
自分で事業を廻したいと言っている人は次に紹介するスモールビジネスの世界にチャレンジする人が多い。
当事者として事業を動かす面白さ、ホワイトな職場環境は大きな魅力。例外はあるが多くの場合コンサル時代よりも給与水準は下がってしまうのと、上下関係というのが強くありコンサルファームに比べたら窮屈さがあるといった面もある。
YA氏(コンサル→日系大手事業会社)
給与アップの転職も可能であり、職場の雰囲気・働き方もコンサル時代と近しいものがあり働きやすい。ただし、同じ外資系といってもコンサルファームよりも本国のパワーが強い。そのため、日本は"販売支社"という位置づけになってしまっている感は否めない。
DU氏(コンサル→外資系大手事業会社)
3.スタートアップ
コンサル後のキャリアパスとして、知人などから誘われてスタートアップ事業に参画したり、起業したりする人も少なくない。
コンサルタントとしての経験や知見を活かしてゼロイチへの挑戦や自分でビジネスをグロースさせる経験を積みたいのが主な理由である。
このタイプの人はそもそもコンサルティングファームで勤め上げるつもりはなく、箔をつけるためそしてビジネス戦闘力を上げるためにコンサルファームに入社してきている人が多い。
る。
毎日駆け抜けるようなスピード感を感じながら働くことができるのは大きな魅力。
一方、腰を据えて物事を考える時間がなかったり、社内インフラが整備されおらずカオスな職場になっていたりと、負の側面もしっかり見ておかないと後悔することになる。KM氏(コンサル→スタートアップ)
4.PEファンド
PEファンドは採用数自体が決して多くないため、ランキングでは上位に来ていないがコンサルのキャリアパスとして根強い人気を誇っている。
投資家として資本を入れて、第三者ではなく当事者として経営改善を行うため、「手触り感がない」「意志決定者になれない」といった不満を持つコンサルタントには非常に魅力的な転職先である。
また、一般的に高給と言われるコンサル業界からも大きな給与UPが望まれ、「コンサル時代から給与を上げるにはPEファンドしかない」とまで言われている。
周囲もビジネスマンとしてレベルが高く成長環境がある。但し、投資先の資本を握ると言っても、結局アドバイザリー色は抜けないので、コンサルワークが好きで給与のアップサイドを目指したいという人におすすめのキャリア。また、PEファンドの次のキャリアが描きにくい。
FE氏(コンサル→PEファンド)
5.ベンチャーキャピタル
近年コンサルのキャリアパスとして人気を上げているのがベンチャーキャピタルである。
大手コンサルファームのクライアントとなると、日本を代表とする大手企業であり、どちらかというと旧態依然とした事業を展開している。
そのため、ベンチャーキャピタリストとしてビジネスの最先端に触れられるのベンチャーキャピタルは、知的好奇心の高いコンサルタントには非常に魅力的な転職先である。
ビジネスの最先端に毎日触れられるので、本当に刺激的で面白い。投資先を支援するというマインドも、コンサル時代にクライアントを支援するというものと近くて心地よい。但し、給与は下がることを覚悟しておいた方が良い。
GI氏(コンサル→ベンチャーキャピタル)
6.独立/起業
コンサルのキャリアパスとして、近年非常に人気が高いのが、フリーコンサルとしての独立や自分で事業を立ち上げるというキャリアパスである。
起業でうまくいかなくてもフリーコンサルとして稼げるため挑戦しやすくなったという声も多い。
また、コンサルファーム時代とやることは大きく変わらない一方で、給与が1.5倍以上になるため、アップサイドを狙ってフリーコンサルになる人も多いようだ。
また、そうしたフリーコンサルに案件を紹介するエージェントが多数出てきたことも、ポストコンサルキャリアとして、フリーコンサルになることを後押ししている。
働く場所や時間も自由で給与は1.5倍。ファーム時代では出会えなかった人との人脈ができたりとビジネスマンとしての幅が広がる。一方、自分のできることでしか価値を生めないので、コンサルタントとしての幅を広げることが難しいというのが現実
CY氏(コンサル→フリーコンサル)
【ファーム別】戦略コンサル出身者のキャリアパス(転職先)
ここでは戦略系コンサルファーム出身者で人気の高いキャリアパスをそれぞれ紹介する。
1.スタートアップ・起業
戦略系コンサル出身で最も多いのがスタートアップへの転職または起業だ。
メガスタートアップの事業部長や上場前スタートアップの経営幹部として転職する人もいれば、知人から誘われてゼロイチの起業に挑戦したり、自分でビジネスを立ち上げる社員などさまざまである。
2.PEファンド
戦略系コンサルのスキルを活かしてPEファンドに転職する人も多い。
特にバリューアップのチームに参画するケースが多く、業務内容も近しいため即戦力として活躍しているコンサルタントは多い。
自分で事業価値を高めてビジネスの成長を支援する側に廻りたい人、もしくは更なる年収UPを見込んでPEファンドに転職する人が多い。
3.外資系企業
GAFAMなど大手外資系企業に転職する人も多い。
シビアな環境に身を置き自分を成長させつつ年収は維持したいと考えている人に多いケースである。
最も人気が高いのがGoogle、meta(旧facebook)で海外志向が強いコンサルタントは本社異動を狙って日本オフィスに入社する人が多い。
ただし、戦略コンサル出身とはいえGAFAMに転職することは容易ではなく、それなりの転職準備をすることになる。
【ファーム別】総合コンサル出身者のキャリアパス(転職先)
ここでは総合系コンサルファーム出身者で人気の高いキャリアパスをそれぞれ紹介する。
1.競合コンサルファーム
総合系からの転職で最も多いのが他社コンサルファームである。
コンサル業界では、各社強みや企業カルチャーがそれぞれ異なり、同業の新しい分野を追い求めて転職する人が多い。
経験年次にもよるが、一つ上のポジションでオファーを出されることが多く、ポジションスライドでも微増の年収が期待されるため、自社での昇進を見切った人や少しでも早く年収を上げたい人が多い。
2.日系事業会社
次に多いのが事業会社の経営企画だろう。
コンサルスキルは事業会社からも重宝されるため、マネジメントポジションで入社する人が多い。
なお、アクセンチュアなどIT系に強いコンサル出身の人は、IT部門やDX経営推進部など何かしらテクノロジーに係る部門に転職する人が多い。
総合商社、楽天、UNIQLOなど知名度が高く、比較的風通しがよい企業に転職をする人が多い。
3.スタートアップ・ベンチャー
総合コンサルファーム出身でもスタートアップやベンチャー企業に転職する人は多い。
特に知人から誘われて転職するケースが多く、コンサル時代では経験ができなかったスピード感や躍動を求めて転職するケースが多い。
なおメガベンチャーに転職する人も多く、日系ユニコーン企業に転職する人も多い。
【ポジション別】スタッフ層のコンサル出身者のキャリアパス(転職先)
コンサルタントが転職する際、職位によって転職先の違いがあるのも特徴的だ。
ここではスタッフ層のコンサルタントのキャリアパスについて解説する。
1.競合コンサルファーム
最も多いのが競合コンサルファームへの転職だ。
20代後半から30代前半のコンサルタントに多く、自社での昇進に見切りがついた、所属するコミュニティの人間関係が悪化した、手っ取り早く年収を上げたい、など理由は様々だ。
コンサルファームは各社規模拡大に伴い、人とり合戦が生じているため、コンサルファームのスライド転職は成功しやすい傾向にある。
2.スタートアップ・ベンチャー
次に多いのがスタートアップ・ベンチャー企業である。
若いうちから経営に携われて自分の価値を向上できること、将来の新規公開株を目的にしている、知人に誘われて転職するなど理由は様々である。
特に、20代後半で独身の場合に多く、失敗してもコンサル出身という経歴でまだやり直しがきくと考え飛び出す人が多い。
3.事業会社
スタッフレベルの転職先として、事業会社の経営企画やIT/DX部門に転職する若手コンサルタントも多い。
理由は人それぞれだが、もともとコンサルで勤め上げるつもりはなく、どこかしらのタイミングで事業会社で勤め上げることを想定してコンサル企業に入社してきた人に多いのがこのパターンである。
結婚して子供ができた若手コンサルタントは、このケースが最も多いと言えるだろう。
【ポジション別】マネージャー層のコンサル出身者のキャリアパス(転職先)
ここではマネージャー層のコンサルタントのキャリアパスについて解説する。
1.競合コンサルファーム
総合系コンサルファームのマネージャー以上が次に目指す転職先は意外にも競合の総合コンサルファームであることが多い。
マネージャー以上になると社内の人間関係に軋轢が生じやすくなるため、何かしらの理由で関係が悪化し新天地を追い求めて転職する人が多い。
ただし、上記は総合系コンサルファームに限る。
戦略系コンサルファームのマネージャー以上は競合ファームへ転職する人は少なく、次に記述している外資系企業に転職する人が多い。
2.外資系企業
大手外資系に転職するマネージャーも多い。
特にテクノロジー関連のコンサルティングをしてきた人はこの傾向が強く、GAFAMなどのプラットフォーマーをはじめ、SAP、NVIDIA、Intel、Cisco、など室長レベルで米国系のテクノロジー企業に転職する人も多い。
戦略コンサル出身や総合系のビジネスコンサルタントとして活躍してきた人は、外資系企業の事業部長などでオファーをもらうことがあり、P&G、Nike、Nestleなど企業名はさまざまである。
3.独立・起業
マネージャー以上のポジションで活躍してきたコンサルタントは次のキャリアとしてフリーコンサルや起業する人もいる。
コンサル企業のマネージャーまで上り詰めた自信や更なる面白みを目指す人に多いのがこのケースである。
元々好奇心が強く、地に足が付いていない浮きだった人がこのケースに該当することが多く、卒業後も成功している人が多い印象である。
コンサル出身者がキャリアパスを描く上で注意すべき点
コンサル出身であればキャリアパスが広がるため、転職先に迷うことがあるだろう。
キャリアは自分で築くものであるが、コンサル出身の著者が自身の経験を踏まえて、キャリアを築くうえで注意すべき観点を提言させていただこう。
目先の年収を求めて転職しないこと
これまで紹介してきたように、年収UPを狙って転職する人が多い。
特にコンサルファーム to コンサルファームを目指すコンサルタントに多いのがこのパターンである。
年収UPは確かに魅力的で、早く年収をあげたいという気持ちも理解できる。
しかし、数十年働く中で、年収UPのタイミングを数年早めただけにすぎず、むしろ、現職の人間関係を断ち切ることや、未経験領域に踏み出すことのリスクなど、長期キャリアの観点では必ずしもメリットがあるとは限らない。
知名度やブランドに気をとらわれすぎないこと
企業名や知名度に憧れてコンサルから別企業に転職する人がいるのも事実だ。
憧憬を持つことは悪いことではないが、憧れで自分のキャリアを築くべきでない。
しっかりと自分の経歴を棚卸し、将来どうなりたいか、そのための手段として転職活動をす出来が本質的には大事だ。
キャリアは企業名やブランドではなく、自分が何をしてきてどのような結果を残してきたかの方が遥かに大事だ。
知名度の低い企業でもしっかりと実績を残して語ることができる人は、どの企業に行っても活躍している。
コンサル内でのキャリアパス
コンサル内でのキャリアパスとして以下のようになっている。
(ファームによって名称は異なるものの、大きくは以下のような分類になっている)
各役職で与えられた役割をしっかり担うことができ、かつ次の職位の役割にもチャレンジできると評価されれば、次の役職に昇進することになる。
しかし、現在のコンサルファーム各社のサービスラインは多角化しており、上記のような単純明確なキャリアパスではなくなっている。
同じコンサル業界、または同じコンサルファームに所属していたとしても、経験してきたプロジェクトによって身につく知識やスキルが大きく異なり、キャリアパスが大きく変わってくるのだ。
それほどまでに現在のコンサルファームが手掛けるプロジェクトは多様化しており、キャリアパスを考える上では「経験」という軸をしっかり考えていく必要がある。